振り子式脱進機と相対するのが棒テンプ式脱進機です。
ピン歯車又は冠歯車(=ガンギ車)が爪と錘の付いた棒テンプを回転させ、棒テンプの慣性を利用して時間を測ります。構造上、ガンギ車の歯数は必ず奇数になります。
棒テンプ式脱進機のガンギ車は棒テンプの動きと逆の方向に力を加えています。イメージとしてはシーソーのような感じです。
振り子よりコンパクトで重力の影響を受けにくいのがメリットですが、棒テンプ式脱進機はガンギ車のトルクによって振幅時間が変わってしまうというデメリットがあります。
制作に利用するなら、トルクの変わらない時計だけの構造体には使えます。時計に何かからくり機構を搭載する場合はガンギ車のトルクが不均一になりやすいので、その場合は振り子式脱進機を使ったほうが精度は得られます。
また、時計機構以外にもからくりの動作速度を調整する目的で搭載するのはありです。有名な茶運び人形にも棒テンプ式脱進機が搭載されており、それが高速で動くことで動作速度を制御しています。
余談ですが、昔の和時計にはこの棒テンプ式脱進機が多く使われていたそうです。
歴史的な見解は置いといて、江戸時代の日本には不定時法があったので、その時間を時計で表現するのに棒テンプ式の時計は都合が良かったのでしょうか。2つの異なる棒テンプを搭載して昼と夜の時間を測ることができたそうです。振り子2つでも同じことができそうですが振り子は0の状態からは動かないですから。