脱進機を比較する。

コラム | Column

脱進機は時計やからくりの心臓とも言える機構です。機械式の時計であれば必ず脱進機が搭載されています(電気やクウォーツ時計は別ですけどね〜)。

脱進機はゼンマイや錘(おもり)による動力を少しずつ解放させるために搭載されます。もし、脱進機が無いと歯車が一気に回転してしまいあっという間に動き終わってしまします。

振り子式脱進機

棒テンプ式脱進機

振り子式脱進機と棒テンプ式脱進機を紹介しましたが、その他ほとんどの脱進機はこの2つの派生機構ともいえます。

この2つの脱進機の決定的な違いは振り子/テンプに力を加える方向です。

振り子式脱進機のガンギ車は、振り子の動きと同じ方向に力を加えています。イメージとしてはブランコみたいなものです。振り子の等時性が働くので、振幅の精度が出やすいです。

対して棒テンプ式脱進機のガンギ車は、棒テンプの動きと逆の方向に力を加えています。こちらはシーソーのような感じです。振り子の等時性は無いのでガンギ車の力が大きいと棒テンプも振幅が速くなります。なので、トルクの大きさに精度が影響されやすいです。

精度は圧倒的に振子式脱進機が有利

上記の通り、精度面では振子式脱進機が有利です。

時計につける脱進機は特別な理由がない限りは振子式脱進機を採用していいと思います。脱進機の派生機構が振子式か棒テンプ式かどちらの派生かわからない場合はガンギ車がテンプに加える力の方向とタイミングを確認してみてください。

棒テンプ式脱進機のメリット

じゃあ棒テンプ式脱進機は振子式の下位にあたるのかと言われると、そうでもありません。

棒テンプ式脱進機は振子式脱進機よりもコンパクトで、空間的な制約が少なく高速稼働に適しています。

特に高速稼働ができるという点は、からくり機構をスムーズに動かすことに役立ちます。茶運び人形の内部にも棒テンプ式脱進機が使われており、そのおかげでカタカタとゆっくり動くことができています。

仮に茶運び人形が振子式脱進機で動いていたらどうなるのか、動きはコマ送りな感じになりますし、本体の動きに振子が対応できなくなるでしょう。

棒テンプ式脱進機の派生機構の例

なので、時計は振子式、からくりは棒テンプ式を使うなど、役割を考えて採用していくといいと思います。